口腔外科・親知らず治療
お口の違和感から全身のバランスを守るために
親知らずは、お口の一番奥に生えてくる永久歯です。
多くの場合、10代後半から20代にかけて生え始めますが、現代人は顎のサイズが小さくなっている傾向があり、親知らずが真っ直ぐに生えるための十分なスペースが不足しています。
そのため、真横に向いて斜めに生えてきたり、歯ぐきの中に半分埋まったままになったりするケースが非常に多く見受けられます。
斜めに生えた親知らずは、手前にある健康な歯を強い力で押し出し続けます。
この持続的な押す力が、ドミノ倒しのようにお口全体の歯並びを狂わせ、噛み合わせのバランスを崩す大きな原因となります。
噛み合わせの乱れは、当院が基準とする顎の関節が最もリラックスする位置である「シン中心位」から下顎を遠ざけます。
顎の位置がズレると、重い頭を支える首や肩の筋肉に異常な緊張が生じ、全身の姿勢が歪んでいきます。
姿勢が歪めば気道が圧迫されて呼吸が浅くなり、慢性的な疲労感や頭痛といった全身の不調を引き起こします。
親知らずの違和感を放置することは、単にお口の中の問題にとどまらず、全身の健康を損なうことと同義です。
智歯周囲炎(ちししゅういえん)という潜むリスク
親知らずが歯ぐきに半分だけ覆い被さっている状態は、お口の衛生環境を著しく悪化させます。
歯と歯ぐきの間にできた深い隙間に食べかすや細菌が溜まりやすくなり、通常の歯磨きでは汚れを落としきることができません。
この細菌が引き起こす歯ぐきの強い炎症を「智歯周囲炎」と呼びます。
智歯周囲炎が進行すると、歯ぐきがパンパンに腫れ上がり、口を開けることすら困難になるほどの激しい痛みを伴います。
さらに、炎症が周囲の組織に波及すると、顔全体が腫れたり、発熱や全身の倦怠感を引き起こしたりすることもあります。
このような急性症状を未然に防ぐためにも、トラブルの原因となりやすい親知らずは、適切なタイミングでの抜歯の検討が必要です。
3次元CTを用いた精密な事前検査と診断
親知らずの抜歯をはじめとする口腔外科の処置は、歯ぐきを切開したり、顎の骨にアプローチしたりする外科的な技術を伴います。
安全に処置を行うためには、メスを入れる前の事前の準備と正確な診断が結果のすべてを決定づけます。
特に下顎の親知らずの根のすぐ近くには、下唇や顎の感覚を司る太い神経(下歯槽神経)や、重要な血管が通る「下顎管」という管が走っています。
また、上顎の親知らずのすぐ上には、上顎洞と呼ばれる鼻に繋がる空洞が存在します。
これらの組織を誤って傷つけてしまうと、術後に長期間の麻痺が残ったり、多量の出血を招いたりする大きなリスクが伴います。
従来の平面的なデンタルX線装置による画像だけでは、神経や血管と歯の根がどれくらい離れているかを、前後の立体感を持って正確に測ることは困難でした。
当院では高精度なデンタルCTを使用し、顎の骨の内部構造を3次元の立体画像として精密に撮影します。
神経の走行ルート、血管の位置、そして複雑に曲がった親知らずの根の形状までをミリ単位で正確に把握します。
視覚的で確実なデータに基づいた診断を行うことで、手術のリスクを限りなくゼロに近づけ、安全な治療を実現します。
抜歯すべき親知らずと残すべき親知らずの見極め
親知らずが生えてきたからといって、すべてを無条件に抜歯しなければならないわけではありません。
当院では事前の精密な検査に基づき、抜くべきか残すべきかを的確に見極めます。
抜歯をご提案するケース
- むし歯や歯周病が進行しており、手前の健康な歯に悪影響を及ぼしている場合
- 斜めに生えて歯並びを圧迫している場合
- 智歯周囲炎を繰り返している場合
残すことを検討するケース
- 真っ直ぐに生えており、上下の歯でしっかりと噛み合って機能している場合
綺麗に保たれている親知らずは、将来もし別の奥歯を失ってしまった際に、その部分に移植する歯(歯牙移植)として活用できる可能性があります。
患者様の将来のお口の環境を見据え、残すメリットと抜くメリットを比較検討して方針を決定します。
最小限の術式の選択と確実な術野の確保
外科処置において、患者様の身体への負担を減らすための鍵は、組織へのダメージをどれだけ少なくできるかという点にあります。
歯ぐきを不必要に大きく切開したり、周りの骨を広範囲に削ったりすれば、術後の腫れや痛みは当然強くなります。
当院では事前のCT画像による綿密なシミュレーションをもとに、目的の親知らずに的確にアプローチできる最小限の術式を選択します。
切開する範囲を最小限にとどめるためには、狭い範囲でも患部をしっかりと目視できる環境、すなわち「術野の確保」が不可欠です。
拡大鏡などを使用し、暗く狭いお口の中を明るく拡大して確認しながら処置を進めます。
周囲の健康な歯ぐきや骨をなるべく傷つけることなく、原因となっている歯を素早く正確に取り除きます。
この無駄のない的確な処置が手術時間を短縮し、傷口の早期回復を促します。
術後の疼痛コントロールによる負担の軽減
親知らずの抜歯に対して強い恐怖心を抱かれる方の多くは、術後の痛みや顔の腫れを心配されています。
当院では手術中の痛みを取り除くことはもちろん、ご自宅に帰られた後の痛み(疼痛)を和らげるためのコントロールにも力を入れています。
手術の際は表面麻酔や体温に近い温度に温めた麻酔液、極細の注射針を使用し、痛みを抑えた麻酔を時間をかけて丁寧に行います。
処置中の痛みを感じさせない環境を整えた上で、抜歯を実施します。そして、術後に関しては麻酔の効果が完全に切れる前に、適切な鎮痛剤や抗炎症薬を服用していただきます。
痛みが強くなってから慌てて薬を飲むのではなく、痛みの波が来る前に先回りして薬を効かせることで、不快な時間を大幅に減らします。
最小限の術式で組織へのダメージを抑えているため、術後の腫れそのものも少なく済みます
もちろん、親知らずの生え方や抜歯時の状態によって、炎症が強く出ることもございますが、なるべく術後の疼痛を最小限にできるようアプローチしていきます。
さらに、抜歯した穴に血の塊(血餅)がしっかりと留まるよう、術後のうがいの仕方や食事の注意点を詳しくご説明します。
血餅が剥がれて骨が露出する「ドライソケット」という強い痛みを伴う症状を防ぎ、患者様が処置の翌日からもなるべく普段通りの生活を送れるようサポートします。
親知らず以外の口腔外科疾患への対応
当院の口腔外科は、親知らずの抜歯以外にもお口周りのさまざまなトラブルに対応します。
- お口の粘膜にできた治りにくい口内炎
- 顎の骨の中にできた嚢胞(膿の袋)の摘出
- 転倒などによるお口周りのケガの処置
お口の中に違和感がある、できものが大きくなってきたといった症状がある場合は、自己判断せずにご相談ください。
デンタルCTを用いた精密な検査を行い、必要であれば専門の医療機関へのご紹介もスムーズに行う体制を整えています。
全身の姿勢と呼吸を見据えたアプローチ
口腔外科の手術を受ける際、患者様は緊張や不安から無意識のうちに全身に力が入ってしまいます。
身体がこわばり筋肉が緊張した状態では、血流が悪くなり、傷の治りにも影響を与えます。
また、術後に痛みをかばうために不自然な姿勢をとってしまうことで、首や肩の凝りが悪化することもあります。
当院では患者様がリラックスして処置を受けられ、術後の疼痛を最小限にし、なるべく最短で傷口が治るよう、術式や術後のケア、そしてしっかりと患者様に納得していただけるような説明を心がけます。
必要に応じて、食事や栄養面のサポート・ご案内もさせていただきます。歯を抜いて終わりではなく、身体の治癒力を高めるための総合的なサポートを行います。
健やかな毎日を取り戻すためのサポート
親知らずの痛みや違和感を我慢し続けることは、お口の健康だけでなく、場合によっては全身のバランスを崩す原因になります。
当院の口腔外科治療は、痛い部分だけを局所的に見るのではなく、姿勢や呼吸、顎の位置など、患者様の全身の健康を見据えて行います。
事前の精密なCT検査、組織へのダメージを抑える最小限の術式、そして術後の細やかな疼痛コントロールにより、患者様の身体的・心理的な負担を大きく減らします。
カフェのようなリラックスできる空間で、スタッフ一同、皆様を温かくお迎えいたします。
患者様が痛みや違和感から解放され、毎日を健やかに過ごせるよう、安全な外科治療を実践してまいります。
お口周りのトラブルは、どうぞお早めにご相談ください。

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