かみ合わせ・顎関節症治療
顎の不調は全身のバランスが崩れているサインです
口を大きく開けようとすると耳の前のあたりでカクカク、ジャリジャリという音が鳴る。
硬いものを噛むと顎の関節や周囲の筋肉に痛みが走る。
朝起きた時に口がスムーズに開かない、あるいは指が縦に二本入らないほど口が開かなくなってしまった。
このような症状にお悩みであれば、それは「顎関節症」のサインです。
顎関節症は、単に顎の関節部分だけが悪くなっている病気ではありません。
日々の生活習慣、姿勢の崩れ、そしてお口の中の「噛み合わせのズレ」が複雑に絡み合って発症するサインです。
顎の関節は頭の骨と下顎の骨を繋ぐ非常にデリケートな部分であり、全身のバランスを保つための重要なセンサーの役割を果たしています。
噛み合わせがズレていると、無意識のうちに下顎を不自然な位置に動かして噛もうとします。
人間の頭は非常に重いため、下顎の位置がわずかにズレるだけで頭の重心が傾きます。
その傾いた重い頭を支えようとして、首や肩、背中の筋肉に異常な緊張が生まれます。
これが、原因のわからない慢性的な頭痛や肩こり、首の痛み、めまいといった不調を引き起こす大きな要因です。
当院では、顎の痛みを取り除くだけの表面的な処置は行いません。
不調の根本的な原因である噛み合わせのズレなどを正し、全身の健康を取り戻すための本質的な治療をご提案します。
下顎の位置(顎位)を考慮した精密なアプローチ
かみ合わせ治療や顎関節症治療において、当院が最も基準としているのが「下顎の位置(顎位)」です。
顎の関節が本来あるべき正しい位置に収まっていなければ、いくら歯の形をきれいに整えても症状が改善することはありません。
当院は、九州地方でも受診できる医院が少ない「シン中心位」の考え方に基づき治療を行います。
シン中心位とは、顎の関節が最もリラックスし、周囲の筋肉や靭帯に無理な負担がかかっていない安定した位置を指します。
長年の噛み癖や歯ぎしり、合わない被せ物などによって、このシン中心位から下顎がズレてしまっている患者様が非常に多くいらっしゃいます。
治療では、まずこのシン中心位を正確に見つけ出します。
筋肉の緊張を解きほぐし、顎の関節が自然に収まる位置を確認した上で、その位置でしっかりと噛めるようにお口の中の環境を整えていきます。
顎位を正すことが、顎関節症の症状を和らげ、全身の筋肉のバランスを回復させるための第一歩です。
歯と顎関節の将来的な保存を優先する治療計画
噛み合わせが悪いからといって、すぐに健康な天然の歯を大きく削って平らにしてしまうような治療は行いません。
安易に歯を削ることは、歯の寿命を確実に縮める行為です。
当院の目指す医療は、その場しのぎで痛みを消すことではなく、十年後、二十年後も患者様がご自身の歯で美味しく食事を楽しめる状態を守り抜くことです。
そのため、将来的な「歯の保存」と「顎関節の保存」を最優先に考えた治療計画を立案します。
なぜ噛み合わせが崩れてしまったのか、なぜ特定の歯ばかりがすり減っているのかという原因を深く探ります。
歯を削るという選択は最終手段とし、まずは顎の筋肉の緊張を和らげる装置を使用したり、歯だけでなく足元から姿勢を正すアプローチを行ったりと、身体に負担の少ない方法から順に検討を進めます。
患者様の大切な身体の組織を可能な限り残し、生涯にわたって機能し続けるお口の環境を作ります。
噛む力(咬合力)を可視化する丁寧な検査
正しい噛み合わせを作るためには、患者様ごとの「噛む力(咬合力)」の強さや方向を正確に把握することが欠かせません。
人間が強く噛み締めた時の力は、ご自身の体重に匹敵するほど大きなものです。
この強い力が一部の歯にだけ集中してしまうと、その歯が割れたり、歯を支える骨が溶けたり、顎の関節に過度な負担が蓄積して顎関節症を悪化させます。
当院ではそもそも今の顎の位置が正しい位置にあるのかどうかを確認し、身体に優しい顎の位置を分析した上で実際に体の変化を確認していきます。
また、お口全体の力のバランスを調べるために「咬合紙」と呼ばれる専用の薄い紙も使用します。
カチカチと噛んでいただいたり、ギリギリと歯ぎしりのように顎を動かしていただいたりすることで、どの歯が強く当たっているか、顎を動かした時にどの歯が引っかかっているかをミクロン単位で視覚的に確認します。
この丁寧な検査を繰り返すことで、お口全体の力の分散を精密にコントロールし、身体にとって優しく、血流が改善したり、呼吸がしやすくなるような状態へと導きます。
咬合力を考慮した材質のご提案
詰め物や被せ物(修復物)の治療が必要になった場合、どのような材質を選ぶかが、噛み合わせの安定と顎関節の保護に直結します。
見た目の美しさだけで素材を決めることは大変危険です。
例えば、非常に強い力で食いしばる癖がある患者様の奥歯に強度の足りない素材や硬すぎる素材を入れてしまうと、修復物自体が割れてしまったり、噛み合う相手の天然の歯に負担をかけてしまったりします。
また、削れたりすり減ったりすることで、せっかく合わせた噛み合わせの高さが変わり、再び顎の関節にズレが生じます。
当院では、事前の検査で把握した患者様の咬合力や顎の動きの癖を考慮し、最も適した材質をご提案します。
- 強い力がかかる奥歯には耐久性に優れた素材を使用します。
- 顎の関節への衝撃を和らげる必要がある場合は、しなやかさを持つ素材を選択します。
患者様のお口の環境に合わせた適切な素材選びが、治療後の良い状態を長く維持する秘訣です。
顎関節の形態と状態に合わせた多様な治療法
顎関節症の症状や進行度合いは、患者様一人ひとりで大きく異なります。
筋肉の疲労が主な原因である場合もあれば、関節の内部の構造そのものに問題が生じている場合もあります。
そのため、当院では一つの方法に偏ることなく、顎関節の形態や状態に合わせて複数の治療法をご提案します。
顎の負担を軽減するオクルーザルスプリント
顎関節症の治療において非常に有効なのが、お口に装着する「オクルーザルスプリント(顎関節用スプリント)」です。
これは、透明な樹脂で作られたマウスピースのような装置です。
主に就寝中に装着していただくことで、上下の歯が直接強く噛み合うのを防ぎます。
スプリントを入れることで顎の関節にわずかな隙間が生まれ、関節にかかっていた圧力をスッと逃がすことができます。
これにより、関節内部の炎症が和らぎ、周囲の筋肉の過剰な緊張が解けていきます。
また、歯ぎしりや食いしばりによる歯のすり減りを防ぐ保護装置としての役割も果たします。
日常生活の癖から顎を守るマウスガード
日中の無意識の食いしばりや、スポーツを行う際に顎に力が入ってしまう患者様には、専用のマウスガードを作製します。
日中の活動時に顎の関節を保護し、正しい顎位を維持するためのサポートを行います。
精密な型取りから作製するため、市販の製品のようにズレたり外れたりするストレスがなく、快適にご使用いただけます。
根本的な歯並びを改善する矯正装置
スプリントなどで顎の筋肉をリラックスさせ、正しい下顎の位置(シン中心位)が見つかった後、その位置でしっかりと噛み合うように歯そのものを動かす必要があるケースもあります。
その場合は、矯正装置を使用した治療へと移行します。
マウスピース矯正やワイヤー矯正などを用い、特定の歯に無理な負担がかからない、長期的に安定する噛み合わせをしっかりと作り上げます。
医科や理学療法士と連携する高度なチーム医療
顎の関節は非常に複雑な構造をしており、骨だけでなく、筋肉、靭帯、そして「関節円板」と呼ばれるクッションのような軟骨組織で構成されています。
顎を動かした時にカクカクと音が鳴ったり、口が開かなくなったりする症状の多くは、この関節円板が正しい位置からズレて引っかかっていることが原因です。
歯科医院にあるレントゲンやCTスキャンは、骨の形や状態を立体的に確認するのには非常に優れています。
当院でも高精度なCTスキャンを用いて、顎の関節の骨がすり減っていないか、左右で形に違いがないかを精密に検査します。
しかし、関節円板や筋肉といった柔らかい組織は、レントゲンやCTには写りません。
関節内部の軟骨組織の状態を正確に把握する必要があると判断した場合は、無理に当院だけで治療を完結させようとはしません。
速やかに連携する医科の医療機関へご紹介し、MRI(磁気共鳴画像装置)による精密な撮影を行います。
MRI画像を確認することで、関節円板がどの方向にズレているのか、変形が起きていないかを正確に診断し、的確な治療計画を立てます。
また、噛み合わせや顎のズレが全身の筋肉の歪みから来ている場合や、重度の肩こり・姿勢の悪化を伴う場合は、理学療法士が在籍する施設へのご紹介も行います。
お口の中の専門家である歯科と、身体の専門家である医科や理学療法士が手を取り合うことで、より確実で安全な医療を実現します。
足育を取り入れた全身からのアプローチ
当院ならではの強みとして、噛み合わせの治療に「足育」を融合させています。
顎関節症でお悩みの患者様の立ち姿を確認すると、足の重心が偏り、姿勢が大きく歪んでいるケースが頻繁に見受けられます。
身体を支える土台である足元が不安定なままでは、いくらお口の中でスプリントの調整や噛み合わせの治療を行っても、本当の意味での改善には至りません。
専属の足育担当スタッフが足のアーチの崩れや歩行の癖を分析し、患者様の足に合わせたオーダーメイドのインソールも作成可能です。
正しい靴の選び方のご指導も合わせて行い、足元からしっかりと姿勢を真っ直ぐに正すことで、首や肩の筋肉の緊張が取れ、下顎が自然と正しい位置へと戻りやすくなります。
足育と歯科治療の両輪でアプローチすることが、顎関節症の再発や悪化を防ぐ大きな鍵となります。
かみ合わせ・顎関節症治療の具体的な流れ
丁寧なカウンセリング
まずは、いつから顎が痛むのか、どのような時に音が鳴るのか、頭痛や肩こりなどの全身の症状はあるかなど、現在のお悩みをじっくりとお伺いします。
日々の生活習慣や睡眠時の癖(歯ぎしりなど)についても確認します。
全身を見据えた精密な検査
高精度なCTスキャンを使用し、顎の関節の骨の状態を三次元の立体画像で確認します。
咬合紙を用いて現在の噛み合わせのバランスを調べ、顎の動きをチェックします。
また、全身検査・フリースペースRoomにて足育スタッフとともに足のバランスや立ち姿勢を確認します。
必要な場合は、医科へのMRI撮影のご紹介を行います。
状態のご説明と治療計画の立案
検査結果をもとに、顎関節の形態や現在の症状がなぜ起きているのかを分かりやすくご説明します。
シン中心位へ顎を導くための計画、使用するスプリントの種類、治療にかかる期間や費用をお伝えします。
患者様にご納得いただいてから、実際の治療をスタートします。
オクルーザルスプリントの作製と調整
お口の型取りを行い、患者様専用の顎関節用スプリントを作製します。
完成したスプリントを装着していただき、顎の関節の負担が減るようにミクロン単位で細かく調整を繰り返します。
ご自宅での使用方法や、日頃気をつけていただきたい生活習慣(頬杖をつかない、硬いものを無理に噛まないなど)のアドバイスを行います。
症状の経過確認と足育のアプローチ
定期的にご来院いただき、顎の痛みや口の開きやすさがどう変化したかを確認します。
必要に応じてスプリントの再調整を行います。
同時に、インソールを使用するなど足元からの姿勢改善を進め、全身の筋肉の緊張を和らげます。
根本的な噛み合わせの治療(必要な場合)
スプリントの使用によって顎の関節が正しい位置(シン中心位)で安定し、症状が落ち着いたことを確認します。
その正しい顎位でしっかりと噛み合うように、修復物のやり替えや矯正治療など、根本的な噛み合わせの治療へ移行します。
快適な毎日を取り戻すために
顎関節症や噛み合わせのズレは、食事を楽しむ喜びを奪うだけでなく、原因不明の不調として日々の生活の質を大きく低下させます。
しかし、根本的な原因を見極め、正しいアプローチを行うことで、必ず改善へと向かう道があります。
当院は、患者様のお口の中から全身の健康を支え、快適な毎日を取り戻すためのお手伝いをします。
歯科医師、足育担当スタッフ、そして連携する医科や理学療法士によるチーム医療で、あらゆる角度から患者様の不調に向き合います。
口が開けにくい、顎が痛む、長引く頭痛や肩こりに悩んでいるといった症状がございましたら、どうぞお早めに当院へご相談ください。
カフェのような心安らぐ空間で、スタッフ一同、温かくお迎えいたします。
将来にわたってご自身の歯と顎関節を健康に保ち、豊かな人生を歩むための伴走者として、全力を尽くしてサポートいたします。

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